2022/09/29
溶接
ASMEとは?米国機械学会の団体と規格基準について紹介します。|テクノス三木
テクノス三木では、溶接技術についてASMEの規格基準に沿った資格者による溶接を提供できるということを以前の記事にてご紹介させていただきました。ASME資格者の溶接提供は2023年10月に終了することとなりました。
ASMEの溶接は終了することとなりましたが、この記事はASMEについて調べている方の訪問が多いため、情報収集の一助となればと思い、記事を残させていただくことにしました。(2023年9月追記)
以下、ASMEについて紹介記事となります。参考にしていただければ幸いです。
ところで、ASMEとは何かご存じでしょうか?
- ●「ASMEが何かわからない、初めて聞いた」
- ●「ASMEって聞いたことはあるけど、どういうものかはよくわからない」
という方もおられるのではないでしょうか?
ASMEとは、米国機械学会、もしくはアメリカ機械学会といわれる学会のことです。とはいっても、あまり日本ではなじみがない団体かもしれませんね。
今回の記事ではこのASMEについて、どんな団体でどんな規格基準があるのかについてご紹介したいと思います。
※なお、この記事は日本規格協会著の「ASMEの規格・認証ガイドブック」を参考にしています。
ASME(米国機械学会もしくはアメリカ機械学会)とはどんな団体か
ASMEとは、American Society of Mechanical Engineers の頭文字をとった名称で、米国機械学会(もしくはアメリカ機械学会)のことです。読み方は、「アスメ」もしくは「エー、エス、エム、イー」と読みます。「アスメ」が読みやすいですよね?
1880年に設立された団体で、“生活の質の向上及び機械工学の促進のために、機械工学の知識を発展、普及、適用するために尽くすこと”を目的として、機械工学に関する専門家や、技術者、学生などが参加しています。
発足以来、活動範囲を広げ会員数も増えていて、より適した内容にすべく、目的やビジョン、活動内容なども流動的に変わっているということです。
ASMEが設立されたのは産業革命のころ。当時、たくさんの専門家が育てられ、技術者の協会が作られ始めます。この動きから、ASMEが誕生していきます。
このころにねじなどの部品に互換性がなかったことで、部品の標準化の必要性があったことや、ボイラの爆発事故が多く起こっていたために安全な品質の標準化が求められていたことからASMEのボイラ製造に関する基準作成のための委員会が設置されます。
現在、ASMEの様々な活動の中でも、最も活発な活動が規格化・標準化の活動です。
代表的な規格・基準に「ボイラ及び圧縮容器」「配管基準」「エレベーター」「エスカレーター」「原材料取り扱い」「ガスタービン」「原子力」などがあります。
規格化・標準化以外のASMEの活動
規格化・標準化以外でのASMEの主な活動は以下の4点です。
- ●キャリア教育
- ●会議の開催及び出版
- ●政府への働きかけ
- ●奨学金、褒賞プログラム
ASMEの規格基準とは(ボイラ及び圧縮容器基準についての紹介)
前述したとおり、ASMEの活動の中で最も活発なものが、規格化・標準化です。
その中でも特に代表的なものが、「ボイラ及び圧縮容器基準」(ASME B&PV Code)です。
【 破壊検査とは…対象物の品質を判定するために破壊するか、もしくは品質の価値を損なうような扱い方をする検査のこと 】
ここではこのボイラ及び圧縮容器基準の各セクションについて紹介します。
セクション1.動力ボイラ建造基準 (Section Ⅰ)
ボイラ本体と第1止弁などの主要弁までのボイラ外部配管を含むボイラユニットについて規定されています。すべてのボイラに適応する共通要求事項のパートと、ボイラの製造方法や機種に応じた個別の要求事項のパートがそれぞれ規定されています。
規定されたパートは11パートに分かれており、それぞれに適用範囲や材料の適応基準、設計、製造、検査、品質基準などの要求事項があります。
セクション2.規格材料規定 (Section Ⅱ)
ASME規格材料について規定されており、4つのパートから構成されています。
パートA:鉄鋼材料規格
パートB:非金属材料規格
パートC:溶接材料規格
パートD:材料特性
セクション3.原子力施設用機器建造基準 (Section Ⅲ)
原子力プラントの中の広範囲の(圧力容器・配管弁・ポンプ・タンク・格納容器のような耐圧機器だけでなく、それらの機器の支持製造と炉心支持構造物を含む)機器について規定しています。
ここのセクションで規定されている基準は、原子力プラントを含む耐圧容器や支持構造物の中でも、放射性物質の吸収や放射線の被ばくなどといった人的な被害を防止するために機能上重要と判断されるものに適応されます。そのため、それ以外の者にはほかのセクションの基準が適応されることも多くあります。
セクション4.加熱ボイラ建造基準 (Section Ⅳ)
通常パッケージ品として大量に生産されるような(セクション1の動力ボイラよりも低温低圧の)加熱ボイラのユニットに適応されます。(ボイラ本体だけでなく配管や付属品・計装も適用範囲に含む)
セクション5.非破壊試験 (Section Ⅴ)
放射線透過試験、超音波探傷試験、磁紛探傷試験などの各非破壊試験の具体的な試験方法を示す規格です。
非破壊試験の方法を示すサブセクションAと非破壊試験関係の書類を示すサブセクションBで構成されています。
セクション6.加熱ボイラの保守及び運転に関する推奨基準(Section Ⅵ)
加熱ボイラ(セクション4の基準に基づいて製造された)の運転段階に適応されるものです。
加熱ボイラの使用者に対する基礎知識、付属品、燃料、付属設備、運転操作・保守・補修などについての解説や推奨事項がまとめられています。
セクション7.動力ボイラの保守に関する推奨基準(Section Ⅶ)
セクション1の基準に基づいて製造された動力ボイラの運転段階に適応されるものです。
セクション6と同様にボイラ使用者に対する基礎知識、付属品、燃料、付属設備、運転操作・保守・補修などについての解説や推奨事項がまとめられています。
セクション8.火なし圧力容器建造基準(Section Ⅷ)
火なし圧力容器単体(配管や付属品を含んでいない)に対する規格です。
低圧・中圧・高圧の3つに分かれて基準が設定されています。
セクション9.溶接・ろう付け及び溶接士・オペレーターの認定基準(Section Ⅸ)
溶接、ろう付け及び融接に対する溶接施工方法(溶接施工要領書:WPS)、溶接施工方法確認試験(施工方法認定記録:PQR)及び溶接士の認定試験の基準について規定しています。
ボイラ及び圧縮容器基準は溶接規格といっても良いほどに溶接に関して複雑な基準が要求されています。(一般要求事項、施工要領書認定、施工方法確認試験、各種データについてなど、それぞれ溶接、ろう付け、融接ごとに規定されています。)
セクション10.FRP製圧力容器規格(Section Ⅹ)
FRP製圧力容器単体に対する規格です。(配管や付属品を含まない。)
既定の内容は非金属の複合素材のためほかのセクションとは本質的な違いがあります。
セクション11.原子力発電所機器の併用中検査の基準(Section Ⅺ)
原子力プラント設備の耐圧機器、支持構造物などの併用中検査とそれに伴う補修や改造について規定されています。
セクション12.輸送容器の建造及び継続使用に関する規則(Section Ⅻ)
高速道路、鉄道、空路、水路での危険物輸送に使われ内容積が450ℓを超える輸送容器の製造及び継続使用のための要求事項がまとめられています。
ASMEスタンプ(ASME規格適合認定マーク)について
ASMEには規格に適合していることを証明する認定マークとして、「ASMEスタンプ」があります。
ASMEスタンプは、ASMEの規格基準の最新版に適合している品目であることを示すためのものです。認定証所持者が使用することができます。
認定証所持者は、ASMEから認定(工場認定)を受けた圧力容器の製造者で、実際に圧力容器の製造を行う前に品質管理能力を審査・認定されています。
ASMEスタンプがあることで確立された技術基準に適合している品目であるということを証明しています。
ASMEのボイラ及び圧力容器基準は2年ごとに更新されるため、認定はスタンプの種類ごとに1年から3年で認定の更新をする必要があります。