2023/10/04
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JIS以外の様々な規格のステンレス鋼種記号について紹介します。
ステンレスには様々な種類があり、その多くがJISの規格に適合したもので、JIS記号で表示されています。
テクノス三木では日本の国家規格であるJIS規格の適合製品で部品製造を基本としています。しかし、ステンレスはJIS以外の鋼種記号で表記されていることもあります。
今回は、たくさんあって混乱しがちな、JIS以外のステンレス鋼種記号についてご紹介します。
ステンレスの種類を表す記号(規格の種類)について
ステンレスは多くの種類があり、規格に沿った記号で表示されています。(ステンレスを扱ったの商品の中にも、ステンレスの種類が表示されていないものや、どの規格にも当てはまらない表示が記載されているものもあります。)
多くの場合がJISの記号で表示されていますが、その限りではなく、JIS以外の記号で表記されていることもあります。また、ステンレスのすべての種類がJIS規格適合を受けているわけではなく、JISにはない種類のステンレスもあります。
JIS以外の表記であればJIS規格に適合していない種類のものかというとそういうわけではなく、JISにもある種類の場合もあれば、JISにはない種類の場合もあります。(テクノス三木では基本的にJIS規格のものを使用した製品の製造を行っています。)
JIS以外にもある様々な規格について
前述したとおり、ステンレスの種類の表記にはJISだけではなく、それ以外の規格で種類が表記されていることもあります。ここからは一つの参考に、JIS以外の規格について紹介していきます。
JIS以外の規格は大きく二つに分けることができます。
一つは日本以外の規格(国際表記やそれぞれの国の表記)で表記されている場合。そして、もう一つは日本の製造メーカー独自の規格で表記されている場合です。
JIS以外の規格①海外で使用される規格
JIS以外の規格を大きく分けたうち、一つは海外での使用がメインの規格表示です。
海外使用の規格にも国際規格とそれぞれの国の規格があります。
海外で使用される規格にはアメリカの規格であるAISIに準じた数字を使用されていることが多く、ほかにはステンレスの成分を表す表記や、それ以外の数字を使用しているものも見かけます。
海外で使用される規格にはアメリカの規格であるAISIに準じた数字を使用されていることが多く、ほかにはステンレスの成分を表す表記や、それ以外の数字を使用しているものも見かけます。
※参考※
JISの「SUS304」は一般的に18Cr-8Ni(18クロム8ニッケル。クロムが18%ニッケルが8%という意味。)と呼ばれることが多いですが、実際にはクロムが18~20%、ニッケルが8~10.5%含まれるステンレスがSUS304に該当します。
JISの「SUS304」は一般的に18Cr-8Ni(18クロム8ニッケル。クロムが18%ニッケルが8%という意味。)と呼ばれることが多いですが、実際にはクロムが18~20%、ニッケルが8~10.5%含まれるステンレスがSUS304に該当します。
以下にそれぞれ紹介します。(例としてJISのSUS304に適合するそれぞれの規格を紹介します。)
国際規格のISO
JISが「日本産業規格」という日本の国家規格であるのに対して、ISOは国際標準化機構という機関で国際的に通用する規格を制定しています。(1946年設立)
国際規格は、日本でも海外製品との互換性などのために使用されています。数字だけのナンバー表記と成分を示す記号表記があります。
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → ISO/TS15510 L :4301-304-00-I 記号 X5CrNi18-10
JISステンレス記号:SUS304 → ISO/TS15510 L :4301-304-00-I 記号 X5CrNi18-10
アメリカの規格AISI
米国鉄鋼協会(1855年に貿易の利益増進のために設立。強力で持続可能な米国鉄鋼産業の支援がミッション)の規格です。(JIS規格の数字はこのAISIの数字に準じています。)
(筆者の所感、一番古くに作られた規格で、ほかの多くの規格で参考に使用されています)
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → AISI:304
JISステンレス記号:SUS304 → AISI:304
アメリカの規格UNS
UNSは、金属や合金に統一の番号をつけるシステムです。ASTM(旧称米国試験材料協会:世界でも最大級の民間規格制定機関。)とSAE(米国自動車技術者協会:自動車関連や航空宇宙関連の標準規格開発等をしている非営利団体。SAEインターナショナルともいう。)によって管理されています。北米で広く受け入れられています。
(筆者の所感、記号を見る限り、JISと同じくAISIの数字記号が使用されています)
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → UNS:S30400
JISステンレス記号:SUS304 → UNS:S30400
アメリカの規格ASTM
UNSの管理もしているASTMインターナショナル(元は米国試験材料協会)は世界最大規模の標準化団体で、工業に関する規格が策定されています。国際的に使用されている規格です。
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → ASTM:A276 304
JISステンレス記号:SUS304 → ASTM:A276 304
欧州規格のEN
EUでの統一規格です。欧州標準化機関(CEN、CENELEC、ETSI)が開発している国家規格です(実施が義務)。EU加盟国との貿易のために使用されます。
(筆者の所感ですが、AISIやISOなどの他の記号と共通点が見られず、固有の数字を使用されている記号で去ることが特徴的です)
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → EN:1.4301
JISステンレス記号:SUS304 → EN:1.4301
イギリスの規格BS
英国規格協会(BSI。英国王室認可を受けた民間企業。1901年に標準化委員会の発足が提唱されたことから設立へとつながる。)の規格です。
(ほかの多くの規格と同様、AISIの規格番号を使用されています。)
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → BS:304S31
JISステンレス記号:SUS304 → BS:304S31
フランスの規格NF
フランス国家協会の発行する規格です。フランス規格協会(1926年に設立された公益法人)が認定をしています。
(こちらの規格は18クロム9ニッケルの成分を表す表記をメインにした規格のようです。C₌クロム、N₌ニッケル※筆者の所感です。)
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → NF:Z7CN18-09
JISステンレス記号:SUS304 → NF:Z7CN18-09
ドイツの規格DIN
ドイツ規格協会(1917年に民間団体として発足した非営利団体。ドイツの国家標準化機関。)の定めた規格です。
(18クロム10ニッケルの成分を表記に加えた規格番号です)
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → DIN:X5CrNi18-10
JISステンレス記号:SUS304 → DIN:X5CrNi18-10
中国の規格GB
中国国家標準規格です。中国全土で統一が必要な技術条件に制定されます。
≪ 例 ≫
JISステンレス記号:SUS304 → GB:S30408
JISステンレス記号:SUS304 → GB:S30408
*** ここまでの海外・国際規格についての紹介記事で参考にした資料およびサイト ***
標準化実務入門(経済産業省)・ISOの基礎知識(日本品質保証機構)・ステンレス規格対応表(ステンレス鋼専門情報サイト)・外国規格との比較(ステンレス協会)・アメリカ鉄鋼協会(American Iron and Steel Institute)・Wikipedia(Unified numberring system)・ASTM規格への合致要求とは何か(日本貿易振興機構)・ASTMインターナショナル(ウィキペディア)・SAE International(ウィキペディア)・ステンレス鋼(ウィキペディア)・BS規格詳細検索(日本規格協会)・EN規格(リサーチ・ナビ)・主要国における国際標準戦略(経済産業省)・欧州標準化委員会(ウィキペディア)・BSIについて(BSIジャパン)・世界の主要なラベル(環境省)・DIN規格(リサーチナビ)・ドイツ規格協会(ウィキペディア)・中国の標準規格とは(GB NAVI)・GB規格とは(CEND.jp) …など(順不同) 内容は2023年9月時点です。誤り・変更・訂正等ありましたらご連絡いただければ確認後訂正や修正等をしますのでよろしくお願いいたします。
標準化実務入門(経済産業省)・ISOの基礎知識(日本品質保証機構)・ステンレス規格対応表(ステンレス鋼専門情報サイト)・外国規格との比較(ステンレス協会)・アメリカ鉄鋼協会(American Iron and Steel Institute)・Wikipedia(Unified numberring system)・ASTM規格への合致要求とは何か(日本貿易振興機構)・ASTMインターナショナル(ウィキペディア)・SAE International(ウィキペディア)・ステンレス鋼(ウィキペディア)・BS規格詳細検索(日本規格協会)・EN規格(リサーチ・ナビ)・主要国における国際標準戦略(経済産業省)・欧州標準化委員会(ウィキペディア)・BSIについて(BSIジャパン)・世界の主要なラベル(環境省)・DIN規格(リサーチナビ)・ドイツ規格協会(ウィキペディア)・中国の標準規格とは(GB NAVI)・GB規格とは(CEND.jp) …など(順不同) 内容は2023年9月時点です。誤り・変更・訂正等ありましたらご連絡いただければ確認後訂正や修正等をしますのでよろしくお願いいたします。
JIS以外の規格②日本の製造メーカー独自の規格
ステンレスを製造しているメーカー各社が独自で種類を表している記号があります。
JISにない鋼種のものだけメーカー独自の表記をしている会社(JISにあるものはJISの表記)や、JISにあるものもメーカー独自の表記をしている会社があります。製造メーカーはJIS適合のステンレスだけではなく、独自で優れた性質を持つステンレスを製造している場合が多いようです。
各メーカーの記号について、ここでいくつかのメーカーをご紹介させていただきます。(各社サイトのステンレスページへのリンクも併せて)(すべて2023年9月現在の表記。詳しい内容は各公式サイトをご確認ください。)
日鉄ステンレス株式会社(NSステンレス株式会社)
日本のステンレス鋼メーカーで、日本製鉄グループのステンレス鋼事業を管轄しているようです。略称は「NSSC」です。
一般的なステンレスであるJISの「SUS304」などはそのままの表記ですが、あまり一般的ではない鋼種は会社略称の「NSSC」などを頭につけた表記で書かれています。→日鉄ステンレス株式会社サイト
日本製鉄株式会社
日本の大手鉄鋼メーカーです。
JISの「SUS304」などのステンレスも「NAR-304(SUS304)」というようにメーカー独自の表記を使用しているようです。→日本製鉄株式会社サイト
日本冶金工業株式会社
国内大手のステンレスメーカーでナスブランドでも有名な会社です。
JISの「SUS304」などのステンレスも「NAS304」のように自社ブランドの「NAS」を頭につけた表記をしています。→日本冶金工業株式会社のサイト
JFEスチール株式会社
日本の大手鉄鋼メーカー(ウィキペディアによると、生産量は日本製鉄に続いて2位。)です。公式ページによると、クロム系ステンレス鋼専門メーカーとのことで、SUS304のようなオーステナイト系ステンレス鋼(ニッケルが入っている)は製造していないようです。
JISにあるステンレスはJIS表記で、オリジナルのステンレスは頭に社名のJFEがついた記号で表記されています。→JFEスチール株式会社のサイト
山陽特殊製鋼株式会社
兵庫県姫路市が拠点の鉄鋼メーカーで、日本製鉄グループの会社です。
JISのステンレスはJISの表記を使用し、会社オリジナルのステンレス鋼種に関しては、「QS」「SIC」「NCF」など独自の表記を使用しています。→山陽特殊鋼株式会社のサイト
大同特殊鋼株式会社
愛知県名古屋市に本社を置く特殊鋼メーカーです。
JISの表記があるもの(SUS304)などもすべてオリジナルの鋼種記号で表記されています。「DSR」「LAK」などが頭についた表記が多いですが、JISの「SUS304」は「304BF」で、JISの表記に似た表記の鋼種もあるようです。→大同特殊鋼株式会社のサイト
ステンレスの鋼種(規格)はJIS以外にも様々な分類ができる
JISの規格以外のステンレス鋼種記号の表記についてご紹介しました。JISの表記以外で記されたステンレスの鋼種は大きく2つにわけることができます。一つ目は日本以外の海外で使用されるもの、もう一つは日本国内の製造メーカーのオリジナルのものです。
一般的にはJISで表記されていることが多いのであまり目にする機会がないかもしれませんが、別の表記を見かけたら参考になれば幸いです。
テクノス三木ではJIS規格適合鋼種のステンレス加工をしています。ご依頼・ご相談はお気軽にご相談ください。
今回ご紹介したように、ステンレスには様々な鋼種表記があります。テクノス三木ではJIS適合鋼種のステンレス加工を施工しています。実際に加工依頼で多いのは例に上げさせていただいていた「SUS304」ですが、それ以外の鋼種ステンレスの加工にも対応しています。
ぜひお気軽にお問合せください。