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2023/12/20
切削加工

マシニング加工しにくい金属(難削材)ランキング!とその対処法 ~現場の声から


様々な種類の金属の中でも特にマシニングセンターで加工しにくい金属について、現場スタッフへのアンケートからわかった結果をこの記事では報告します。
加工しにくい金属ランキングの記事は、総合ランキング、旋盤加工ランキングと上げてきて、今回はマシニング加工でのランキングです。このランキングも、テクノス三木工場内で切削加工に関わっているスタッフに直接アンケートをとって集計したものです。
マシニングセンターを扱っている機械オペレーターの生の声による最も加工しにくいと感じる金属のランキングと、そういった難削材への対処方法についてご紹介します。

金属に関するアンケートで、マシニング加工しにくいと感じる金属(難削材)ランキングとその対処方法についてまとめてみた

今回もこれまでの加工しにくい金属ランキングと同様に、現場の切削加工に関わっているスタッフに実施した金属に関するアンケートからです。
アンケート項目の一つ、加工しにくい(もしくは扱いにくい)と感じる金属とその理由についてポイントをつけて集計し、ランク付けしました。そのランキング順位発表とそれら加工しにくい金属をマシニングセンターで加工するときの対処方法についてご紹介します。
マシニングセンターでのランキングについては、似た製品を加工する機会が多いスタッフが同じ意見をあげていたために、やや特徴的なランキングとなりました。

アンケートの方法について

アンケートはシンプルに「加工しにくいと感じる金属(鋼種)を教えてください。」とし、1位から3位まで記入して提出してもらいました。対処方法と細かい内容についてはアンケートの後に現場に聞き取りに行きました。
記入してもらった金属には、各順位それぞれにポイント加算(1位が3ポイント、2位が2ポイント、3位が1ポイント)。合計ポイントを出すことでランキングを付けました。ポイントの付与は、一つの順位に2つ以上種類がかかれている場合も、差をつけることなく同じポイントとしました。
(同じ人の回答に1位が3つ、2位が2つ…と書かれていた場合、それぞれ3ポイントの金属が3つ、2ポイントの金属が2つ…となる。)

マシニングセンター以外にも総合・旋盤のランキングも作成して別記事に掲載

ランキングにはマシニングセンターでのランキング(この記事)のほかに切削加工の総合ランキングと旋盤加工のランキングも作成してそれぞれの記事を作成しました。

マシニングセンターで加工しにくい金属(難削材)ランキング

マシニングセンターは旋盤と同じように硬い金属で刃物がダメになるという意見もありましたが、それよりも金属の性質で固定(チャッキング)が難しいものが加工しにくいという意見がやや多く、そちらがランキング結果に反映されました。(似た素材の加工をする人が全く同じ意見であったことから1~3位までが「熱電対」に使われるやや似た特性のある金属となりました。
  • 1位…コンスタンタン
  • 2位…クロメル
  • 3位…アルメル

マシニング加工しにくい金属1位はコンスタンタン

マシニング加工しにくい金属1位はコンスタンタン。あまり聞きなれない金属のコンスタンタンは、銅とニッケルが主成分の合金でほかの金属と一緒に熱電対に使用される金属です。やわらかめの金属で、強い力が加わると簡単に変形してしまうためチャッキング(加工するときの固定)が難しい、というのが理由でした。
固定が強すぎると変形してしまい、弱すぎると加工している途中に動いてしまうのだそうです。

マシニング加工しにくい金属2位はクロメル

マシニング加工しにくい金属2位はクロメル。クロメルはコンスタンタンと同じく熱電対に使用される金属です。クロムを10%含むニッケル合金で、コンスタンタンと同じくチャッキングが難しいという理由でした。

マシニング加工しにくい金属3位はアルメル

マシニング加工しにくい金属3位はアルメル。アルメルもコンスタンタン・クロメルと同じく鉄電対に使用される金属です。アルミニウムを3%含むニッケル合金で、こちらも1位2位と同じくチャッキングが難しいとのことでした。

1~3位ランクインの金属(コンスタンタン・クロメル・アルメル)の加工しにくい理由 ~現場の声(アンケートより抜粋)

コンスタンタン・クロメル・アルメルの加工しにくいと感じる理由の生の声はこちら。(アンケートより抜粋)

  • * やわらかくチャッキングすると変形しやすい。
  • * 3種共にチャッキングの力加減が難しく、弱ければ加工中にワークが動いてしまい強ければワークが変形してしまい扱いにくい。
また、3位までにランクインした金属はすべてチャッキングが難しいというものでしたが、扱いにくい金属の他の意見として、強度のある金属が刃物が欠けやすく加工時間がかかるという意見がありました。(ハステロイ・SUS310S・SUS316など)

マシニングスタッフに聞いた、加工しにくい金属を加工するときの対処法

アンケート後、マシニング加工をするスタッフにも加工しにくい金属への対処法はどんなことをしているかについて聞き取りに行きました。
マシニングのスタッフから出ていた加工しにくい金属の理由の大きなものはチャッキングで変形しやすいことと、刃物が欠けるという問題点でした。

チャッキングで変形しやすい金属への対処法(マシニングスタッフ)

チャッキングで変形しやすい金属を加工するときの対処法は、
  • * 少しずつ締める力を強めていきながらワークが動かない+変形もしない固定を探っていく
  • * 加工の内容により柔軟に対応する

とのことでした。

とにかく強く締めてしまうと変形してしまうので少しずつ様子を見ながら締めていくことで、ちょうど良い強さを見つけ、一つできてしまえば、あとは機械が同じ強さで固定するようにできるので、最初の一つがきちんと合うようにするのが大切とのこと。
また、加工の内容によってはあとから削り取ることになる部分をあえて変形させてしまって固定するなど、その時の状況によって柔軟に対応しているとのことでした。
* 参考に *
旋盤スタッフからは加工しにくい金属の理由として製品を加工するために固定するときに変形しやすい金属は上がってきておらず、旋盤では変形することはないのか質問してきました。
旋盤でも金属が変形してしまうことはあるとのこと。固定が弱すぎると加工中の製品がとんで行ってしまったりすることもあるとのことでした。しかし、機械の性質上、マシニングの方が厚みの少ないもの(変形しやすい形状)を扱う場面が多いのか、旋盤ではそれほど気にならないのかな?という印象でした。
また、マシニング加工で依頼を受ける金属の方がこういった特徴を持つ場合が多いのかもしれません。

マシニング加工時に刃物が欠けてしまう金属への対処法(マシニングスタッフ)

マシニングでの切削加工中に刃物が欠けてしまう金属への対処法は、
  • * 刃物の選択
  • * 機械プログラムの微調整

等でした。

最近の刃物は昔と違って、歯の部分がさまざまな形状のものがあったり、加工時に切削油の出てくるところが違ったりするので、どのような刃物を使用するかによって欠けをずいぶん減らすことができるのと、経験を積んでいくことで自然と適切な刃物を選べるようになっていくのでそんなに気にせず加工できるようになっていたりもするとのことでした。
機械のプログラムで速度や送り、削り幅を調整することでも刃物の欠けに対応することができるとのことでした。

マシニング加工しにくい金属(難削材)とその対処方法のまとめ

マシニング加工しにくい金属はチャッキングするときに変形してしまうやわらかい金属と刃物が欠けやすく加工時間がかかる金属でした。
※今回のアンケートでは1位から3位まですべてがチャッキングが難しい金属が上がっていましたが、機械によって取り扱う金属が変わるため、旋盤と同じように刃物が欠けてしまう硬い金属が扱いにくいという意見もありました。一度チャッキングで変形しやすい金属を扱ってみるとそちらの方が扱いにくいと感じるのかな?という印象でした。
マシニング加工でも、旋盤加工と同じく機械プログラムの微調整と適切な刃物の選択が扱いにくい金属を加工するときに必要な対処法でした。変形しやすいような難しい金属には特に、状況に合わせて柔軟に対応することや、少しずつ様子を見ながら丁寧に対応することで図面通りの製品を加工していました。