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2023/12/15
切削加工

旋盤加工しにくい金属(難削材)ランキング!とその対処法 ~現場の声から


様々な種類がある金属の中でも特に加工しにくい金属について、現場スタッフへのアンケートからわかった結果をランキング形式で報告しています。
今回の記事も前回と同様に、テクノス三木工場内で切削加工に関わっているスタッフに直接アンケートから上がってきた声による、最も旋盤加工しにくいと感じる金属のランキングと、そういった難削材への対処方法についてのご紹介です。
今回は切削加工スタッフの中でも旋盤のスタッフのランキングです。

金属に関するアンケートで、旋盤加工しにくいと感じる金属(難削材)ランキングとその対処方法についてまとめてみた

今回は現場の切削加工に関わっているスタッフに実施した金属に関するアンケートのうち、加工しにくい(もしくは扱いにくい)と感じる金属について、旋盤スタッフのランキング発表とそれら加工しにくい金属を切削加工するときの対処方法についてご紹介します。

アンケートの方法について

アンケート方法はもちろんほかの記事と同じです。シンプルに「加工しにくいと感じる金属(鋼種)を教えてください。」として1位から3位まで記述してもらいました。対処方法と細かい内容についてはアンケートの後に現場に聞き取りに行きました。
記入してもらった金属のポイント加算は、総合ランキングやマシニングランキングと同様に、1位が3ポイント、2位が2ポイント、3位が1ポイントとし、合計ポイントでランキングを付けました。一つの順位に2つ以上種類がかかれている場合も、差をつけることなく同じポイントとしました。
(1位が3つ、2位が2つ…と書かれていたとしても、すべての金属にそれぞれポイント)同率1位が3つあれば3位まで埋まる…という形よりもその方が現場の意見が吸収できると考えました。

総合と旋盤・マシニングセンターそれぞれのランキングを上げて別記事に掲載

ランキングには切削加工総合と、旋盤でのランキング(←この記事)とマシニングセンターそれぞれの結果ランキングも上げてみることにしました。(旋盤加工とマシニングセンターでの加工は機械の種類が異なるためか違った結果が見られたため)

旋盤加工しにくい金属ランキング

旋盤加工での加工しにくいと感じられる金属ランキングです。旋盤加工では特に、刃物が欠けることや切削加工で出たクズが刃物に絡まって取れにくい金属が加工しにくいと感じられることがよくわかる結果となりました。
  • 1位…ハステロイ
  • 2位…チタン
  • 3位…SUS310S、2相ステンレス(オーステナイト・フェライト系ステンレス)

旋盤加工しにくい金属1位はハステロイ

旋盤加工しにくい金属の1位は断然ハステロイでした。

旋盤加工のスタッフではハステロイの名前を上げない人はいないほど、加工しにくい金属第1位のハステロイ。

そのどういうところが「加工しにくい」「扱いにくい」かの、生の声はこちら。(アンケートより抜粋)

  • * 条件が合わないとすぐにチップ及びドリルが欠ける。
  • * 連続運転がしにくい。
  • * 切りくずが絡まる。
  • * 刃物管理(がしにくい)
  • * 硬いため、刃物がすぐにやられる。
金属の特徴として強度があるから使用されることも多いハステロイは、その強度ゆえに加工をするときには加工をしにくいということがわかる結果となりました。

旋盤加工しにくい金属2位はチタン

旋盤加工しにくい金属2位はチタンでした。(総合と同じ)
チタンは靭性が強く旋盤での切削加工では刃物に削ったクズか絡まりついてしまうことが加工しにくさをあげている要因です。削ったクズが勝手に落ちてくれれば切削可能の手間がずいぶんと違うということですね。

チタンの「加工しにくい」「扱いにくい」ところの生の声はこちら。(アンケートより抜粋)

  • * 切り粉が巻き付き、むしれる。
  • * 切りくずが絡まる。
  • * 切粉が巻き付きやすく、むしれ等が起こる。
チタンの加工しにくいところはほとんどすべての意見が切りくずが刃物に絡まることでした。

旋盤加工しにくい金属3位はステンレスのSUS310Sと2相ステンレス。

旋盤加工しにくい金属ランキングの3位は同ポイントでSUS310Sと2相ステンレス(オーステナイト・フェライト系ステンレス)でした。この二つも一般的に「加工しにくい」と言われる難削材の金属です。(どちらもステンレスです。)
SUS310Sはオーステナイト系ステンレスの中でもクロムとニッケルの含有量が多いため切削加工がしにくいステンレスです。
また、2相ステンレスとも呼ばれる「オーステナイト・フェライト系ステンレス」はオーステナイト系ステンレスとフェライト系ステンレスの特徴を持ち合わせたステンレスで、強度と耐食性に優れ、ニッケルの含有量が少ないためコスト削減が期待されるステンレスですが、その強度から加工がしにくいと言われがちです。
テクノス三木の現場スタッフからも「加工しにくい」との声が上がっていました。

SUS310S、および、2相ステンレスが加工しにくい理由の生の声はこちら。(アンケートより抜粋)

  • * 切粉のハケが悪い為、加工時に詰まる。連続運転しにくい。(SUS310S)
  • * 硬いため、刃物がやられる。(SUS310S)
  • * 切りくずが絡まる。(2相ステンレス)
3位にランクインしたこの二つのステンレスの加工しにくい理由は1位、2位と同じで強度のために刃物が欠けやすいことや、刃物に切削クズが巻き付くことでした。
* ステンレスの種類に関する参考記事 *

旋盤スタッフに聞いた、加工しにくい金属を加工するときの対処法

アンケート後、旋盤加工のスタッフにこのような加工しにくい金属を加工するときに実際にしている対処法を聞いてきました。
旋盤のスタッフから特に多く出ていたのは、刃物が欠けることと切削クズが刃物に絡まるという大きく二つの問題点でした。それぞれについて確認をしてきました。

刃物がダメになってしまう金属への対処法

旋盤加工時に刃物がダメになってしまう金属を加工するときの対処法は、
  • 刃物の選択
  • 機械プログラムの微調整
  • 連続運転せずに何回も確認する
でした。
最近は研究が進んでいて刃物の先から切削油が出てくるものや、刃物の形状が様々なものがあり、そういった多くの種類の刃物の中から、より適切な刃物を選択することや、削る幅やスピードなどといった細かい調整をすることで、なるべく刃物が欠けるというトラブルがずいぶん減らせるとのことでした。
また、何度も確認することで刃物が欠けてしまうことで出るリスクを減らすことができるとのことでした。
経験を積んでいくことでどのあたりで刃物が欠けそうかが予測がついたり、場面によって使う刃物を選べるようになっていくので、加工に手間はかかったとしてもしっかりとした品質の製品を作っていくことができるとのことでした。

刃物に切削クズが巻き付いてしまう金属への対処法

旋盤加工時に切削クズが刃物に巻き付いてしまう金属への対処法は、
  • 刃物の選択
  • 機械プログラムの調整(削り幅を小さくしてなるべくクズがばらけやすいようにする)
  • マメに屑を取り去る
でした。
刃物に切削クズが巻き付いてしまう問題も、様々な刃物の種類の中から金属と相性の良い刃物を選択することでクズがばらけやすくなることもあるとのことでした。刃物の相性が合うものを見つけたおかげでクズが巻き付かなくなった金属もあるけれどなかなかそうもいかないものもあるとのこと。
機械プログラムの調整について、例えば普段であれば2mm幅で削るようなものを0.5mm幅で削ることで刃物も欠けにくいしクズもばらけやすくなるなど、効果がみられるとのことでした。
後はとにかくマメにクズを取り去る、とのことでした。
* 参考に… *
加工しにくい理由で「切削クズが絡みつく」という意見はマシニングのスタッフからは出てこなかったので、マシニングのスタッフに「巻き付くことはないのですか?」と聞いてみました。
マシニング加工でもクズが刃物に巻き付くことはある、とのことでしたが、旋盤ほど気にはならないのかな?という印象でした。

旋盤で切削加工しにくい金属(難削材)とその対処方法のまとめ

旋盤加工で扱いにくい金属(難削材)は、「ハステロイ・チタン・SUS310Sや二相ステンレス」など、どれも一般的に強度が高く難削材と言われることが多い金属でした。
加工しにくい金属(難削材)への対処方法としては、適切な刃物を選択することと機械プログラムの細かい調整、連続運転せずにマメに確認することが大きく上げられました。時間がかかってしまうけど細かいっ対処方法を実施することで失敗をなるべく減らすことができ、安定的な品質の製品作成に大きくかかわってくるとのことでした。
*** この記事に出てきた難削材の加工事例 ***